この空間は、住宅のちょっと変わったリビングダイニングである。
設計与件は、将来2世帯住宅として使えることであったが、1世帯の時に2世帯目のリビングダイニングは、施主の趣味の音楽の場とすることも求められた。
また、施主の希望であった「温かい木の空間」とするため、この空間は板を折るような構造で作られ、文字通り木に包まれる形である。
友人とのパーティ、ミニコンサート、そしてリビングダイニングと七変化するためには、コンサート時の客席のみの広い空間や、大きなパーティーテーブルが必要である。
また、コンサートの時には、台所のような生活の匂いは消し去りたい。
そこで、台所は、壁を閉じると壁の裏に完全に隠れてしまい、壁を開ければ台所は、リビングダイニングと一体化するようにした。
さらにその時、台所の中の収納棚は、リビングダイニングに出てきて大テーブルに変身する。
台所は、この空間の後方の壁の裏にある。
間仕切り壁は均等寸法の6枚のパネルとなっていて、閉めると目地のみが見えるただの壁となる。
6枚の内この部屋と台所の出入り口が各1枚、稼働家具の隠しに2枚の計4枚が開閉するパネルである。
I型キッチンのカウンターの後ろの収納棚が可動変身家具である。この家具は、A天板,B収納棚,C4本足テーブルという3つのパーツで構成されている。
パーツA:幅60㎝(袖を上げれば幅75㎝)×長さ155㎝の天板
パーツB:幅45㎝×長さ125㎝の収納棚
パーツC:幅60㎝×長さ155㎝の4本足テーブル
パーツAをパーツBの上に載せると幅60㎝×長155㎝の収納付きテーブルとなる。
2つのテーブルを横につなげれば135㎝×155㎝、縦につなげば60㎝(一部75㎝も可)×310㎝の大テーブルとなる。
またこの家具は、台所でキッチンカウンターと共に使用するときはカウンターと同じ高さ85㎝であるが、テーブルとして利用するときは高さ70㎝と、高さも使いやすく変身する。
次の写真は、音楽仲間の友人たちと楽器を持ち寄って合奏を楽しむパーティの一コマである。幸い音響効果は非常に良いそうで、さらに、施主からは「毎日、朝起きると幸せを感じる家」との評価をいただくことができた。2世帯として使う時期は未だ来ないようである。
建て主の方にも設計のプロセスを一緒に楽しんでほしいと思います。設計の正解は一つでないので、より良い解を探すためケーススタディを提示し相談しながら設計を進めます。敷地にはそれぞれ特徴があります。その特徴を生かすことが大切で、最終的には建て主の予想を超える魅力的空間を提案することが建築家の役割です。
加藤隆久さん、野室丈明さんプロフィール>>
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(2021.12記。写真は建築家提供。3-4枚目photo©濱田 良平)
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