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SDGs/住宅建築で今後行うべきこと

endosan240.jpg2020年の建築物省エネ法(施行2021年)の改正に伴い、一般的な住宅でも省エネ基準に対する説明義務が発生することに。そして今後は届け出義務、適合義務へとステップアップする予定になっています。

ハウスメーカーや工務店はいち早く、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)やその他の基準に適合する新築住宅を販売していますが、建築家はすべてオーダーメイドで、型のある「住宅という商品」を売るわけではない為、出遅れ感があります。

そのような状況下で、既に新築住宅の設計に省エネ対応を盛り込んでいらっしゃる、建築家・遠藤 誠氏(写真)に省エネ、脱炭素住宅についてお話を聞いてみたいと思います。

Q1)いち早く対応しよう!と思われたきっかけは何だったのでしょうか。

△.jpg

かつて住宅設計のご依頼いただいた施主からのご要望で対応せざるを得なくなった、というのが正直なところです。

しかも補助金などが目当てというよりは、環境問題に対する意識の高さからいただいたリクエストでして、そういう姿勢に対し我々も後ろ向きでいられるはずもなく...。その時はLCCM住宅(ライフサイクルカーボンマイナス住宅)などの認定を取得しました。

今年(2021)になり建築物省エネ法も施工され、とりあえずは説明義務のみですが、これをきっかけとしてこうした意識はますます高まるでしょう。そういう意味でも早めにそういう建て主に出会えて、必要に迫られ出遅れなかったことに(!)、今となっては感謝している次第です。

Q2)実際の設計で、どのように取り入れているか教えて下さい。

まずは省エネにたいする具体的な目的が何であり、どのレベルの基準、認定取得をするかなどを建て主にヒアリングします。その中でデメリット、工事費が高くなったり、設計の自由度が狭められたり、場合により追加設計料を請求させてくことなども伝えます。そこで見えてくる目指す方向に対し、ちょっと当事務所だけでは手に負えないな~と判断した場合、これまでは専門家に外注することもありましたが、今後はほぼ当事務所で対応できるのではないかと考えています。

img_product-thumnail_05@2x.jpg

その際に使用するツールとしては「住宅性能診断士 ホームズ君 省エネ診断 エキスパート」というソフトを使用しています。やや高額のソフトですが、シミュレーション機能が充実しているので、施主にも分かり易く説明することができます。

通常は基本設計が完了する頃に一度情報を入れ込んで確認、その後実施設計をしながら目標値まで調整していくのが基本の作業工程となります。

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(画像はホームズ君公式サイトより)

Q3)デザインと省エネとの両立は難しいという印象があります。遠藤さんはどのように解決されるのでしょうか。

両立が難しいというよりは、省エネの計算などをする際にどうしてもごく一般的な仕様をベースとしたフォーマットがあり、その点で自由かつ柔軟に対応しデザインする建築家たちの姿勢が相反する、ということなのではないでしょうか?

一方で、例えばガラス張りのデザインとか、断熱無しの内外打放しコンクリートなどがもてはやされた時代もありましたが、もはや個人的にはそのような建築には魅力を感じませんし、デザインとしても時代遅れなのではないかと思います。

そんな中で理不尽ではないか!?と思うのは、例えば木製サッシ、断熱性自体は優れているにもかかわらず、製作するものは性能が数値化できないため最低ランクになってしまうとか、ZEHの計算上、居室面積を最小にすることが有利なため、通風や採光上有利だけど分かり易く部屋を区切れないオープンプランニングが、むしろマイナスになってしまうことなどがあります。

木製建具の使用例 設計|遠藤誠建築設計事務所 施工|株式会社匠陽 撮影|澤﨑信孝

「どのように解決していますか」という問いに対してですが、上記のような問題について言えば得策などありません。木製サッシの採用やオープンプランにすべきと判断した場合には、断熱材を割り増したり、高額でも省エネ設備機器を採用するなどして、何とかクリアしています。

Q4)建築家として遠藤さんが目指す省エネレベルについて

太陽光パネルW350.jpg

断熱性能で言えば、現在の省エネ法の基準では十分な性能とは思えず(東京23区など6地域のUA値基準0.87W/㎡K)、現時点で当事務所の基準と考えているのはHEAT20のG1基準です。(6地域のUA値0.56W/㎡K)

日射取得率はとりあえず省エネ法の基準、6地域の2.8ηAC。具体的な設計としてはlixilサーモスⅩ程度の断熱サッシで、ガラスはLow-Eで複層以上。南面は庇を付けた極力大きな窓を設け、それ以外の東西北面の窓は、極力小さく数も最小、という方針を徹底します。

気密性(C値)についても、以上の基準には含まれないもケースも多いですが、最低でも1.0㎠/㎡以下には抑えたいところ。(測定するかどうかは検討要)

ただし、以上については今後徐々により高いレベルに移行していくことになると思います。更に、ZEHやLCCMのためには、創出エネルギーも必要になりますが、その対応のメインになる太陽光パネルも、近い将来標準仕様とすべき時がくるかもしれません。


SDGSW350.jpg以上、難解な基準値などを述べましたが、個人的にはを深くして夏の日差しを遮ったり、南の庭には落葉樹を植えたり、といった分かり易く、空間の気持ちよさと直結するようなパッシブデザインの考え方の方が好きです。

更に言えば、省エネ基準にも眉唾なところがあるので、住まいは必要最低限でなるべく小さくとか、長い間その建築使っていただくとかの方が、よほど地球環境には優しいのではないかと...。この問題はSDGsのような広い視点で考えていく必要があるように思います。

遠藤さん、お答えいただきありがとうございました。

(2021.11月記。聞き手|住まいづくりコンサルタント 村松葉子、画像はイメージです。)

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