暮らしの変化と楽しい間取りvol.6「Share wallで空間を繋ぐ」建築家熊木英雄さん

2022年に完成した"今ならでは"の住宅実例を、登録建築家自身がご紹介します。

ハウスメーカーによる築27年の戸建て住宅を、建築家がリノベーションした事例です。
今まではご両親の住まいであったところを、今回子世帯（ご夫婦＋小学生のお子さん）が同居することになり、住まい方の提案を依頼されました。
そこで、LDK＋既存の4室が小別されていた空間を、LDK＋storage＋家事室というように１つの空間にリノベーション。家族を心地よく繋ぐ住まいが完成しました。

家族の気配を感じながら家事ができる間取り。

平面図

リノベーション　4つのテーマ

１つめは掃除のしやすさを考慮しました。
最近はルンバ（自動ＡＩ掃除機）を利用するご家庭が増えました。ただ、ルンバをかける前に床にあるものをとりあえずどこかに移動することなど、皆さんもお感じになりませんか？いわば、掃除の前に掃除（片付け）が必要になってしまいます。
今回はそうならないように、１日の動線で出勤（通学）、帰宅時に荷物の置き場を考慮し、リビングに入る右手にカバン置きがあります。この整理棚こそ、毎日の置き場の記憶、床にカバンを置かない（清潔）、なんといっても掃除のときにカバンを移動することがなく、掃除機がかけられます。こうすることで、掃除が格段に楽になるのです。そこ以外にも、お子様の習い事でバッグがあること等を考慮し、フックを部屋のいくつかに設けております。もちろん大人の使えるフックもあります。

ルンバのホームベース

鞄置場の定位置

大人のコートハンガー

２つめは、コロナ禍ということで大人もリモート会議・打ち合わせが増えたり、お子様（小学生）もリモート授業、塾ですらリモートが普通に行われます。
そのための家族が使えるデスクをリビングの旧出窓部分に設けました。
そもそも、小学生は最初は食卓で勉強し親が目を行き届かせ、徐々に離れて一人で勉強ができるようになり、中学・高校生くらいから個室で勉強できるようになります。そのため、勉強＆ワークデスクをＬＤＫに内包される位置に設けています。
大人も、タブレットの充電・プリントなど常に情報の検索で使えるように勉強＆ワークデスクを設けました。

子供の手さげ用フックと子供と大人のリモート用デスク

子供が勉強している様子を伺える出窓デスク

３つめは、昨今の夏の猛暑。
室内にいても熱中症になる時代になりました。当室が１階窓際・外周部に位置し、また上階がないため、３方向＋上部から熱がふく射して伝わってきます。また、当時の断熱材の考え方と現在の断熱材の考え方も変遷しました。
今回は、床暖房も含め、床、壁、天井に「高性能断熱材２４ｋ」を施しました。解体時に以前の10Ｋグラスウールのものが確認できたので、2.4倍の断熱効果があがり、性能が格段に上げることができました。猛暑に対し抵抗できる内部空間になり、より健康に安全な暮らしを獲得できました。また断熱効果から空調・床暖房効率が上がり、気密性が上がったことで、防音性や結露の一層の防止にも繋がります。

床、壁、天井に高性能断熱材２４K(施工中)

４つめは、すべての居場所が感じられる間取りにしています。
元々室が４つに分断されておりましたが、１つにするため柱を移動し、ブレースを新たなものにし、キッチンも間取りに合わせた製作キッチンとしました。柱を補強しながら動かし、自由な間取りが獲得できました。

柱の補強、移動をしても空間は一体に

製作キッチン。柱を移動しての設置

"今ならでは"のポイント

・掃除のしやすさ
・家族が使えるデスクリビング
・高性能断熱材を使用し断熱・防音
・すべての居場所が感じられる間取り

詳細情報

●家族構成：ご両親＋子世帯（ご夫婦、お子さん）　
●建築面積：137.87㎡延べ床面積：216.02㎡　リノベーション面積：43.19㎡
●構造：木造　2階建て
●竣工：2022年　
●設計：OrganicDesign Inc　担当　熊木英雄・眞木励
●構造アドバイス：木村佳央構造事務所
●施工：㈱礎コラム
●Photo：Yukinori Okamura

建築家熊木英雄さん

設計の進め方はお客さまの要望から始まります。まずは、ご要望や価値観などをできるだけ沢山お聞かせください。ご一緒にプランニングしていく中で、今と未来のバランスを想いめぐらせましょう。お客様の要望を良い形で引き延ばしていくためのアイデア、敢えての余白、そして適正な取捨選択と丁寧に説明をしながらまとめさせていただくのが私の仕事です。皆さまの想いが伝えられてそれがインスピレーションになって、カタチになってゆきます。

熊木英雄さんプロフィール >>

（2022.11月記）