ご自宅の他に、事務所と賃貸住宅併用を計画中の建て主さま。
建物が複合用途のため、与条件の整理や検討を丁寧に行う必要があり、建築家1名を早めに選んでシミュレーションしながら進めることをお勧めしました。
要望の整理をし、候補建築家を3名に絞り、面談までしたものの、過去の事例やホームページ、面談だけで長いお付き合いになる建築家一人を決めるのは難しいものです。
こんな時は「百聞は一見に如かず」です。条件が整えば、その建築家が設計した実際の建物見学をお勧めしています。私たちコンサルタントもご一緒しています。
建物見学の良いところは、
などです。
今回見学させていただいたのは、建築家の村松基安氏の設計事例。築9年の賃貸住宅兼オーナー自邸です。建築家とオーナー様の案内のもと、建て主さまご夫婦とOZONEのコンサルタントがうかがいました。
歴史ある邸宅街に建つ6階建ての鉄筋コンクリート造(RC造)のビルは、周辺建物と比べて、大きくはないものの、風格があります。入口の緑を眺めながら、アプローチを進むと、建物のタイルと鉄(耐候性鋼材)や木のルーバーが迎えてくれます。そこに古くから在ったかような趣と、清潔感のある佇まいが印象的でした。
共用玄関を入ると、脇に共用のラウンジが整えられていました。手前にはソファがあり中庭が臨めるこのスペースは、とても寛げます。お客さまとゆっくり過ごしたり、出がけに家族を待ったり、プライベートとパブリックを繋ぎ、気持ちを切り替える場所として様々な使い方ができそうですね。
事務所を計画中の建て主さまも、会社の来客用に、このようなスペースを作りたいとおっしゃっていました。
共用廊下と随所に設えられた坪庭の仕切りはブラウンの縦格子でまとめられ、歩くにつれて視界も変化し、建物の中は別世界です。
今回は、オーナー邸も見学させていただくことができました。オーナー邸は最上階ながら、坪庭やバルコニーが各方面に計画され、どの部屋にいても緑と光と風を感じる空間です。「コロナでも全然困らない、雨の日も素敵なのよ。」というオーナー様の感想が、この家の快適さを表していました。そして隅々まで手入れされ、整った空間に、オーナー様が愛着を持ち日々の暮らしを営んでいらっしゃることを感じました。
建物見学の良さは、写真や図面ではわかりにくい、空間の居心地、使い心地を体感できることです。その場所に立ったときの明るさや気配、印象といったものはなかなか写真だけではわかりません。実際のお宅は、本当に気持ちが良く、異次元の居心地の良さを感じることができました。
オーナー様が建築家に依頼した理由や、要望したこと、実際にどうなったかといったリアルな感想が聞けることも、これから計画を進められる建て主さまにとっては重要なことです。
「賃貸の空室が出ない建物にしたかった」という経営の視点から始まり、「タイルの色は当初ピンとこなかったが、他のタイルを取り寄せてみても良い物がなく、結果的に建築家のおすすめのものにして良かった」、「洗濯物のピンチハンガーやハンガーが絡まないように、吊り収納を考えた」等、設計時のエピソードまでいろいろ教えていただけました。
そして、オーナー様から「どんな家をイメージされているのですか?」との問いを受け、建て主さまは「まさに、こちらのお宅です」と答えられていました。
築9年ながら丁寧に手入れされて居心地の良いお宅は、住まい手の暮らしの豊かさの証だと思います。新築時にはわからなかった良い点や改善点なども、具体的にお話いただきました。
建て主さまは、ご自身の計画に取り入れたい要素も見つかり、今後の計画のヒントになったと思います。
今回の訪問を快くお引き受けいただき、お時間をいただきましたオーナー様、手配や案内をしてくれた建築家の村松氏に改めて感謝申し上げます。
(2021.10記 住まいづくりコンサルタント|有田左記子(文)、建築家|村松基安氏、写真家|小川重雄氏)
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