「食卓」や「台所」が印象的だった住宅事例を、建築家自身が紹介します。第7回は建築家 荻原雅史さん。住むほどに味わい深くなりそうな造作のダイニングとキッチンです。
「食卓」や「台所」が印象的だった住宅事例を、建築家自身が紹介します。第7回は建築家 荻原雅史さん。住むほどに味わい深くなりそうな造作のダイニングとキッチンです。
少し前に、築20年強の分譲マンションのリノベーションをおこないました。2LDKの間取りに全面的に手を入れ、キッチンまわりの改修もおこないました。全体の空間構成は間仕切り壁による単なる部屋の切り分けではなく、大きなリビングスペースとそれにひもづく小さなスペースが展開する構成となっています。家族同士の気配が感じられるつながりや空気の流れ、光のつながりが意識されました。
キッチン・ダイニングではブラックチェリーの巾ハギ材天板の造り付けのダイニングテーブルが中心に据えられ、ちょうど4脚の椅子が収まり、家族みんなが食卓を囲みます。椅子は後日、赤色のファブリックの座面のHIROSHIMA(マルニ木工)が選ばれ空間のアクセントとなっています。
キッチン背面、テーブル脇には冷蔵庫やごみ箱が収まる、壁で囲まれた収納スペースが設けられ、リビング側から丸見えにならないようになっています。この部分の壁はマグネット塗装が施されており(浅葱色に塗られた部分)、献立のメニューや学校のお知らせなどを貼ることができるようになっています。実際に住み始めてから、お子さんの描かれた絵や工作が飾られ、さながら展示ウォールのようになっていました。
キッチン脇にはパントリーが設けられ、レンジやトースターなどから、生活用品まで気軽にすっきりと収まるようになっています。キッチンカウンター、テーブル、パントリーが一体になることで家事動線がコンパクトにまとまっています。
当初、キッチンはアイランド式やペニンシュラ式にするアイデアも出されましたが、キッチンではなくテーブルを中心に回遊性のある空間とすることで、キッチン側、リビング側双方から使いやすくし、料理を作る人だけでなく、家族全員で集まるスペースとなることが意図されました。テーブル柱脚は、一本足の軽やかなものとなっており、コンセントが備えられています。天井にはライティングレールが取り付けられ、自由に照明の種類やその位置が変えられます。
住まわれてからの使い方を伺うと、日常の中で、食事はもちろん、キッチンカウンターの延長としてこどもと一緒に料理をする作業台になったり、料理をしながらこどもの勉強を見る場所になったり、テレワーク時のワークスペースになったりと多目的に使われているとのことです。
キッチン本体も造作で作られ、天板は幅4mのステンレスバイブレーション仕上げ、食洗器や収納の扉はラワン材でつくられ、全体的に使いやすさが重視されながらも温かみのあるつくりとなっています。キッチン側の壁は50角のタイル張りで、小さい棚とその下にハンガーレールをつけています。ここにはカップや小物等が飾られインテリアのアクセントになっています。
建築に携わり、多くの人々と出会えることが設計の仕事の一番のやりがいです。これからの出会い、ひとつひとつの仕事を大切にしていきたいと考えています。 住宅を設計する際は、①信頼関係を築くこと、②設備に頼りすぎないこと、③楽しいこと、④周辺の環境を活かすこと、⑤シンプルでありながら奥行きと変化に富むことの5つをとても大切にしています。
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(2021.12記。photo@中村絵(プロフィール写真以外))
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