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現場確認員って頼もしい!vol.4 「浸水しても、取り壊し不要。『洗える家』とは?」

OZONE現場確認員(インスペクター)とは

工事開始のキックオフミーティングである「工事の着工前確認」から参加する現場のプロです。現場で工事や進捗を確認し、最終段階で仕上がりのチェックをしています。インスペクション(検査)と建築士、両方の資格を持ち、自身でも設計事務所を運営しています。OZONEでは数々の現場のチェックを行ってきたスペシャリストです。


今回はそのインスペクター・田口隆一さんに、第9回サステナブル住宅賞(一社)日本木造住宅産業協会会長賞を受賞した「洗える家(SOSd住宅®)」についてお話し頂きます。

田口隆一(たぐち りゅういち)

ARU田口設計工房 田口さん.jpg

主に木造住宅の設計監理、検査、調査、構造計算、
現場監督向けの品質管理講座などの業務を行っています。

資  格| 一級建築士 木造建築士 一級施工管理技士 第二種電気工事士 既存住宅状況調査技術者
日本ホームインスペクターズ協会公認インスペクター 耐震診断士 増改築相談員
マンションリフォームマネージャー 福祉住環境コーディネーター
団体活動| 埼玉建築士会技術委員会委員長
JBN全国工務店協会災害対応住宅研究委員会委員長
受  賞| 第4回埼玉建築賞リフォーム部門最優秀賞「住み継ぐ家」
第9回サステナブル住宅賞(一社)日本木造住宅産業協会会長賞「洗える家」
著  書| 地震に強い家づくりー長期優良住宅の基本(雲母書房)共著、現場のコミュニケーション術(LIXIL)

Q1)「洗える家」とは?

近年、風水害による家屋の被害は甚大となる傾向が強くなってきています。今後さらに大きな被害が頻発するであろうこと、どこの地域でも起きうることは気象関係者も明言しています。

災害が発生しにくい土地を選んで建築することが、長寿命化が進む建物が存する期間を全うさせるための基本であることは言うまでもありませんが、住まいを建てるには様々な条件があることから、洪水が発生する可能性の高い土地に、やむなく建築を行わなければいけない状況が生じることも少なからずありえます。

洗える家外観.jpg「洗える家」は、そうした洪水の危険性がある土地に建てざるを得ない住宅について、万が一浸水してもできるだけ簡易な処置で復旧が可能で、長く使い続けられる建物にするため、(一社)埼玉いえ・まち再生会議で開発を進めてきた「SOSd住宅®(洗える家)」仕様を採用し、泥水が建物内に進入したとしても、施主が容易に壁体内を水で洗い流すことができ、なおかつ壁内の乾燥を促す仕組みを備えた住宅として設計しました。

リビングダイニング洗える家リビングダイニング.jpg
ニセアカシア手摺と大黒柱 壁は漆喰塗大黒柱.jpg

Q2)「洗える家」の特性・仕様は?

洗える家が備えている特性は以下の5つです。

 (1)予想される水害に家財などの被害を最小にする
 (2)水害による床下・壁内への土砂などの流入を最 小限にする
 (3)水害による床下・壁内・床・壁・家具の汚れを容易に洗浄できる
 (4)水害による床下・壁内・床・壁・家具の汚れを容易に乾燥できる
 (5)水害で被害を受けた家具類を早期に復元し、再生活に戻れる

仕様は「SOSd住宅®(洗える家)」概念図のとおりです。

洗える家概念図.jpg

Q3)「従来の家と比較して、コストの面ではいかがですか?

建設地である埼玉地域で、延べ面積160㎡、木造2階建ての実作による見積もり形式でコスト比較を行った結果が下の表です。

2021年建設時点のものであるため、各種建材価格、労務費の上下により変動があると考えられ、おおよその目安となりますが、新築時に浸水対策工事を行う場合、浸水後に復旧工事を行うより640万円のコストメリットがあることが示されています。

また、下表では、表される差額が、洗える家と従来の家のどこの違いで生じるのか、新築時の仕様で主に何が異なっているのか、また、復旧工事の際に想定される工事内容の多寡がどの部位で生じるのかを比較する形で示しています。

【コスト比較と仕様及び復旧工事内容の差】比較.jpg


Q4)検討するにあたって、留意点はありますか?

洗える家の仕様を採用したとしても、それだけで水害に対する万能の対策にはなりえないため、「洗える家」の仕様採用に当たっては以下に挙げる点を考慮しておく必要があります。

  1. この仕様は、洪水後に洗える仕様であるため、洪水発生時に安全に住み続けることができるものではない。避難勧告や避難指示等に従い、まずは避難をすることを前提とする
  2. ハザードマップ等を確認し、浸水想定高さ等から必要な仕様を設定する
  3. 「洗える家」の建築に当たっては、使い方や洗い方などのメンテナンス方法については施主が、納まりや設計上考慮すべき点については設計者が、洗い流せる納まりの実現については施工者が、それぞれ理解し実行することが必要となるため、相互における理解と協力関係を構築することが前提となる
  4. 地域や敷地、予算や施主の特性によ、洗える家で対応できる範囲は異なることから、その住宅に見合った仕様を採用する
  5. 家屋が堤防の決壊個所の近くにあるなど、大量の土砂まじりの強い勢いの水や流出家屋が衝突するなどの壊滅的な水害にはこの仕様は対応していない
  6. 災害初期においては、施工者自身も被災している可能性もあるため、給水インフラが復旧した際の初期対応は、施主自身が行うことが前提となっているため、その対応が可能かの確認を行う

※「SOSd住宅®」とは、
S:水害 O:汚染 S:洗浄 &d:ドライ の頭文字を組み合わせて作られた名称です。

住まいづくりコンサルタントより「洗える家」は、CASBEEの省エネなどの基本性能を担保した上で、水害に対しての性能を確保したという功績での受賞だそうです。常に新たな建築技術への探求心を忘れない、OZONEにとってのとても頼もしい味方!
インスペクションに関して困ったときには何でも相談しています。

※CASBEEは、2001 年に国土交通省が主導し、建築環境・省エネルギー機構内に設置された委員会によって開発された建築物の環境性能評価システムです。


なお「洗える家」の建物概要、基本性能、浸水の想定等については、こちらのリンク先をご覧ください。

 ◎ パネルはこちら >>
 ◎ 詳細はこちら >>

(2022.8月記 コンサルタント 村松葉子)

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